或る世界

2020年9月

皿の右端

皿の端に残った色が、手を遠回りさせた

皿の右端に散った黄橙色の小片を、指先で一か所へ寄せた。中央の厚い切り身へ手を伸ばせば届くのに、その前に端の色が目に入った。黒い面では、一つずつが思ったより離れて見える。

主になるものは、皿の中央で待っている。だから端にある小片は、添えられたものとして見過ごせるはずだった。けれど手を動かすと、中央へ向かう道の途中で小片を散らしてしまいそうになる。先に寄せれば、手は遠回りをせずに済む。

寄せたあとも、皿の量は変わらない。小さな色が右端に集まり、中央までの黒い面が少し広くなった。何かを選んだというより、触れずに通れる場所を作っただけだった。

手を中央へ戻す。右端には黄橙色のかたまりが残り、さっきまで空いていた黒い面には、指先の影だけが短く置かれた。

尾の側から

同じ器の中で、尾だけが先に重なっていた

金属の器を少し回すと、尾びれが重なっている側が手前になった。小さい三尾はほぼ同じ方へ伸びているが、脇の大きな一尾だけは別の向きに置かれている。器の縁は丸く、どちらを手前にしても変わらない。

同じ容器へ入れれば、並んだものは一つの列になると思っていた。けれど頭が集まる側と尾が重なる側が同じではないと、列は途中でほどける。大きさの違いより、向きをそろえないことの方が、器の中を広く見せていた。

どれかを動かせば、四尾は見やすく並ぶかもしれない。ただ、そのためには一尾だけを基準にして、ほかをその方へ向けることになる。いまの器には、まだ中心になる向きがなかった。

器を元へ戻すと、尾びれの薄い黄がまた重なった。頭の方には少し空いた金属の面が残り、その空き方だけが、そろわない向きを受けていた。