或る世界

2019年7月

  1. 始まりは、いつも同じ速さではやってこない

    同じ茎の時間

  2. 食卓の中心は、ひと口ごとに場所を変える

    手の届く順

  3. 渡っている最中には、自分の描く線は見えない

    橋の全景

  4. 目が二つ付くだけで、道具にも性格が生まれる

    噛まない口

  5. 誰かの夕食を、自分の風景にしないために

    水面の食卓

  6. 途中にしか立てない場所にも、固有の時間がある

    仮設の時間

  7. 楽しみは、最後まで残すほど少し重くなる

    最後のひと切れ

  8. 一皿ぶんの場所が、仕事と休みを分けてくれる

    一皿の休み

  9. 同じ名前でも、気になる大きさは同じではない

    食べる種、残す種

  10. 一つの決断は、隣の人に別の予定を生む

    一灯の複数形

  11. 目立つものの外側にも、欠かせない場所がある

    灯りの外側

  12. 正しさのわからない朝にも、傘を選ぶしかない

    どちらの空

  13. 高さだけでは、街との近さを測ることはできない

    低い屋根

  14. 残った長さだけでは、終わりの理由は測れない

    二つの終わり

  15. 消した言葉も、書き直した文のどこかに残る

    戻らない文字

  16. 手順を忘れたとき、食事はようやく始まる

    正しい食べ方

  17. 役に立たないひと手間が、場所を記憶に残す

    余分な仕事

  18. 道が示されても、行き先までは決めてもらえない

    矢印の手前

  19. 待ちきれない一口も、朝食のうちに入る

    座る前の一口

  20. 約束は、空席より先に人を安心させる

    まだない席

  21. 不便な順番が、一枚ぶんの時間をつくっていた

    裏返すまで

  22. 空いている場所にも、人の数は刻まれている

    いない人数

  23. 先頭のない輪でも、足取りは少しずつ揃う

    輪の先頭

  24. きれいにするほど、道具には汚れが移っていく

    汚れる道具

  25. 手を止めたところで、味と文章が重なって残る

    二つの片手間

  26. 香りは、火を通ったあとで初めて生まれる

    香りの手前

  27. 名前が変わっても、二人の角は消えない

    借りた地名