或る世界

或る世界

一回ぶん高いねじ

頭がそろっても金属板の端だけが浮く

小さな金属板を留める二本のねじを、一本ずつ緩めた。頭の大きさも色も同じに見えたので、外した順に白い紙へ置く。二本目が横へ倒れ、一方の軸だけがわずかに長いと分かった。

金属板を戻し、長い方を手前の穴へ入れる。ねじ回しを二度回すと抵抗が増えたが、頭は板より少し高い。もう半回転させると板の手前だけが沈み、反対の端が持ち上がった。指を離せば、薄い板が小さく上下する。

強く締めれば平らになりそうだった。それでも一度戻し、二本を入れ替える。短い方は手前の穴へ一回転多く入り、頭が板の面まで下がった。奥の穴では長い方が同じ高さに収まり、板の四辺がいっせいに動かなくなる。

外す前には、二つの頭は同じ面へ並んでいた。軸の違いは内部へ隠れ、正しい穴に入ったときにも見えない。間違えたときだけ、ねじの高さではなく、押さえられるはずの板の傾きとして外へ現れた。

念のため二本をもう一度緩め、磁石の付いたねじ回しで同時に持ち上げる。短い方が先に外れて長い方の頭へ付き、二本は縦につながった。指で分けて紙へ寝かせると、長い軸の先だけが短い方の影から出ている。

両端がまだ皿にある

中央をつまんでも両端はまだ一口にならない

長い緑の一本を、箸で中央から持ち上げた。つまんだ場所だけが先に上がり、両端は炒め物の山へ残ったままだ。逆さの細いU字ができ、内側にたれの光が集まる。

箸をさらに上げると、左端が先に抜け、たれの細い筋を皿へ落とした。右端は表面へ貼り付いたまま伸び、山は元の形を保つ。一本をつかんだはずなのに、まだ皿から離れた一口にはならない。箸を横へずらして初めて、右端もたれから剥がれた。

それを皿へ戻し、隣にある淡い細切りを同じ位置でつまむ。長さはよく似ていたが、こちらはほとんど曲がらず、両端が同時に山から離れた。周囲の具も動かない。中央を持つという同じ動作が、一方には二つの遅い端を作り、もう一方を最初から一本として運ぶ。

緑の一本を、今度は端に近いところでつまんだ。短い側はすぐ宙へ出たが、長い側は山の表面をなぞり、たれを細く拭っていく。箸を回すと緑は二本の先へ巻き付き、ようやく両端が皿を離れた。

口元へ運ぶ前に箸を少し緩める。巻かれた緑は半周だけほどけ、長い端がもう一度皿へ触れた。たれの点が白い縁へ付き、下の山では淡い細切りが一本、さっき持ち上げた向きのまま横たわっている。

箱の角を追う帯

持ち上げた角へ残る帯が斜めに寄る

台紙の端で、横向きの紙帯へ鋏を入れた。乾いた音とともに二つの切り口が浮いたが、白い箱は台紙から離れない。直角に交わっていたもう一本は、箱の中央を押さえたままだ。

切れた帯を左右へ開き、手前の角へ指を掛ける。箱を持ち上げるにつれ、残った帯は上面の中央から角へ滑った。まっすぐだった褐色の線が斜めになり、持ち上がった側では緩む一方、反対側の角へ深く食い込む。

そのまま引けば抜けそうなのに、力を加えるほど箱は斜めに止まった。いったん台紙へ戻し、帯の下へ人差し指を差し込む。指の背で帯を浮かせ、もう一方の手で箱を横へ送る。褐色の線は上面を横切る位置から動かず、白い箱の方だけが少しずつずれていく。

箱の端が帯へ近づくと、指先に掛かる張りが強くなった。上面にあった帯は角へ達し、そこから側面へ回り込む。箱は横へ動いているのに、押さえられる場所は上から下へ移る。角を越えた帯が、今度は箱を台紙の縁へ引き戻した。

親指で箱を支え、人差し指だけを帯から抜く。空いた帯は側面を滑り、最後の角の下へ入り込んだ。そこを越えるまで箱はまだ台紙とつながっている。手首を少し返すと、紙が底を擦って短く鳴り、白い箱が掌へ落ちた。帯はようやく台紙へ戻り、切れた一本の端だけが箱の跡へ重なる。

次の石から出る水

見えない継ぎ目から足もとへ水が出る

爪先を、草の間に半分だけ見える矩形の石へ載せる。体重を移すと、靴の下ではなく、その一つ先の葉の隙間から濁った水が細く出た。水は短い直線を二本描き、見えない石の角で曲がる。

二本の直線を石の縁だと決め、交わる角へ棒を差し入れた。葉を分けると、その通りに灰色の角が現れる。水は硬い面を通り抜けず、縁へ押し出されたのだろう。次も同じ線を探せば、石へ足を置けるように思えた。

現れた石の中央は泥に覆われ、硬さまでは見えない。踵を手前へ残したまま、爪先だけで二度押す。一度目は沈み、二度目には水が左右へ抜けて硬い面が返った。体重を移すと、その先でも濁った筋が動き始める。

片足を移した。さらに前方の筋も直角に曲がったので、同じ場所へ棒を伸ばす。触れたのは石ではなく、横倒しになった太い茎だった。泥水はその脇にも細い縁を作り、硬い角と同じ印を残す。

棒で茎を持ち上げると、水の直角は崩れ、下には柔らかな泥だけがある。爪先を少し戻す。踏み終えた石の継ぎ目から小さな泡が一つ上がり、今度はどの線にも沿わず、その場で丸く消えた。

泡の袖口

黒いストローを囲む淡い泡の表面

黒いストローを指でつまみ、一センチほど引き上げた。液面に触れていたところから、淡い泡が輪になってついてくる。黒い管の途中に白い袖口ができ、さっきまで表面だった高さをそのまま示していた。

さらに上げると、輪は管を滑らず、厚みだけを失っていく。下の液面ではストローの跡がもう閉じているのに、管の外側には境目が残った。水位を示す線ではない。液面から切り離され、泡だけで持ち運ばれている線だ。

ストローを静かに下ろした。袖口の下端が液面へ触れると、白い輪は横へほどける。ただし全部は表面へ戻らず、管と飲み物の間に透明な筋が一本残った。そこだけ空気が細く押し込まれている。

もう少し沈めると、筋の先がちぎれて小さな気泡になった。気泡は黒い管に沿って上がり、途中で一度、泡の残りへ引っ掛かる。指を離すと、丸い粒だけが先へ抜けた。ストローを傾けても、その粒はもう輪には広がらない。持ち上げた袖口は元の輪へ戻らず、管の外側を通って、一粒の空気として液面へ浮かび出る。